困難さ増す人権擁護法案の行方
 
『國民新聞』9月25日 第19107号
人権擁護法案を考える市民の会代表 平田文昭
 

 人権擁護法案の第162回国会提出が見送りとなったと思いきや、そこに降って湧いたのが解散・総選挙。人権擁護法案反対派議員の多くが小泉郵政法案反対であったため、自民党の公認が得られず無所属もしくは新党での立候補となってしまった。
解散前から、与謝野馨政調会長は、人権擁護法案を秋の臨時国会で、原案のまま提出したい意思を示していた。再提出された場合、いまの自民党の陣営で誰が反対するだろうか。いや反対できるだろうか。
人権擁護法案は依然危機的状況にある。そこで改めてこの法案について注意を喚起したい。
そもそもこの法案は、平成14年3月に失効した同和対策事業特別措置法に替わるものとしては発想された。36府県4533の同和地区に対して33年間で約15兆円を投じてきた。その結果「同和対策の物的な基盤整備は概ね完了した」(地域改善対策協議会)。それなら止めればいいのだが、そうすると「同和特権」がなくなってしまう。そこで同和問題を拡大して「あらゆる人権侵害の被害者の救済等の対応の充実強化を図る」ことを目指すこととした。
自民党の支持母体の1つである。「自由同和会」は最近の主な活動に同和問題以外に「女性、子供、高齢者、障害者、アイヌの人々、外国人、HIV感染者、ハンセン病患者、刑を終えて出所した人、犯罪被害者等、インターネットによる人権侵害、同性愛者に対する差別や虐待」、更に「人権擁護法案の早期成立に向けた活動」を挙げている。この内容を一瞥しただけで、昨今の国家解体運動の手段として利用されている事項が並んでいる。
  既に人権擁護施策推進法(平成8年)、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年)が成立し、人権擁護法で止めを刺す腹積もりであった。「人権」を口実とした国民統制が着々と進んできていたのだ。
  これら反日政策が隠れ社会党である民主党からではなく、「保守党」である筈の自民党により推進されているから一層危ない。例えば古賀誠氏は「野中先生が遺り残した最後の仕事を受け継いでやっている」と公言するなど、政界を引退したことになっている野中氏の影法師であり、背後の真の推進者は野中氏とみて良いであろう。その古賀氏が一貫して固執してきたのが、地方に置かれる人権擁護委員会に外国人もなれるようにすること(国籍条件の排除)である。まさしく外国人参政権への一里塚である。
  政権与党であり、外国人参政権付与に熱心な公明党がこの人権擁護法案推進派であることも、この法案の性質を如実に示すものだ。政教分離や人権侵害についてこの党には口を出して欲しくないものだ。残念ながら自民党議員のうち選挙で公明党の世話になっている者は本法案推進派となっている。
自由同和会の活動内容をみれば、人権を合言葉にあらゆる反日活動団体が接合されることは明らかだろう。今日特に危機的なのは入官での「差別・虐待」を口実としての入官廃止運動と、難民認定の緩和、そして外国人参政権要求運動である。これらの運動は「人権侵害」を言い立てることで国家権力を解体し日本の破壊、乗っ取りを企むものである。
民主党や日弁連は人権擁護法案に反対である。主な理由は、人権委員が内閣府でなく法務省の外局に置かれていることにある。彼らの本音は政府をも超え「国連」に基礎を置く超国家機関の設立である。GHQのような組織である。それによって我国の一切を支配統制し、改革と言う名の破壊を行いたいのである。
これは杞憂ではない。韓国には我国に先駆け国家人権委員会が設立されている。彼らは「世界で最も模範的な国家人権機構」と自賛している。日弁連はこの人権政策局長の朴燦運氏を呼び学習会を開いている。韓国の国家人権委員会はイラク戦争反対、テロ防止法反対、北朝鮮の脅威から韓国を防衛する基本である国家保安法の廃止などを勧告している。その上で彼らが目指すのは、国際法と憲法に基礎を置く機関化である。国際法に依拠するがゆえに国内法を超え本音は政府をも超える組織としたい、憲法に基礎を置くことで予算と人事の自主権を獲得しようとしている。
  日本でも人権擁護法案が成立し人権委員会が出来ればこうした団体と「交流」が行われる。
  我国のプロテスタント教会が左傾する理由の1つが韓国教会との「交流」である。これにより“折伏”されて帰ってくる。(かつて日本基督教団が戦争協力を謝罪したことがあった)。似たようなことが必ず起こる
  また国連規約人権委員会を国内の反日勢力が呼び寄せて、我国に対する誹謗中傷でしかない「勧告」「報告書」を提出させ、それを盾に我国の政策変更を要求することも多くなろう。「人権侵害」という鍵で開かない扉はなくなりつつあるのが我国の現実である。赤旗共産主義が権威失墜した今日、日本に対して憎悪をもっている勢力が手にした核兵器にも相当する武器が「人権」である。男女のことも「ジェンダーフリー」を否定する者は人権侵害者、差別者として断罪できるのだ。
「反日」勢力の勢揃い、それが人権擁護法案推進派である。

 

 
<<論文集 TOPへ    
<<主権回復を目指す会TOPへ